シリ活躍の一方ゲラルトさんは…〜小説「ウィッチャーⅣツバメの塔」感想
ゲームにハマった人は読むべし
はっきり言うと面白い!
ゲームの「ウィッチャー」シリーズにハマった人は、読んで損はないです。
早川書房から順次刊行されている、ポーランド作家アンドレイ・サプコフスキの小説「ウィッチャー」。その4作目「ツバメの塔」が本作です。
ゲーム版から「ウィッチャー」の世界に入った方はやや戸惑うかも。というのもゲームでは、「小説《ウィッチャー》が原作となっている」というような紹介をされているかと思いますが、正確には違います。原作の4作目まで読み進めて、ようやく気づきました。
ゲームと小説のストーリーは全くの別物と。
簡単に言うと小説の後日譚がゲームの物語なんですね。小説はウィッチャー3と同じようにワイルドハントとの鬼ごっこが物語の中核と勝手に思っていました。なので、ゲームにハマった人は、新鮮な気持ちで小説のウィッチャーの世界に没頭できること間違いなし、と言えます。ああ、こういう背景、繋がりがあったのか!と。
ゲラルトさんの不甲斐無さにイライラ
とはいうもののゲーム「ウィッチャー3」と小説「ウィッチャー」は物語の構造は同じです。世界を変える可能性がある運命の子シリを、あらゆる人物が探す、追跡するという点です。
逆に違和感というか、あれっ?と思うのは、以前も書いたのですが、ゲラルトさんが弱いです(笑)
本作「ウィッチャーⅣ ツバメの塔」では古傷が…というシーンが多くて、スカッとしません。苦杯を舐めた宿敵に、主人公がきっちり借りを返す、というのは物語の王道ですが、ゲラルトさんに限っては、全然借りを返せません…
本当に主人公なのでしょうか(笑)
まあ、ゲームでは無双していますからねー。そのギャップがかわいいところでもあるかもしれません。
ヒール勢揃いの「ツバメの塔」
さて本作「ツバメの塔」は5部作の4作目ということで、物語も佳境になって見所が多いと思います。
作者アンドレイ・サプコフスキの筆も滑らかで、様々な登場人物が過去を振り返りつつ、シリ追跡の物語を紡いでいくという凝った構成となっています。
今回、主役級の活躍を見せるのはシリです。ウィッチャーとして徐々に目覚めて、ラストのバトルは最大の見所でしょう。いやーこの戦いはドラマでもきっちり描いて映像化して欲しいです。
そして今作で何が良いかというと、ヒール(悪役)の暴れっぷりです。
まずは、なんといっても殺し屋のボンハートですよ。裸で剣を振り回す、サディスティックな男です。剣の腕はゲラルトさんよりかなり格上じゃないか…
それから二ルフガードのシリ捜索隊を率いるモリフクロウこと、スケレン。シリにとっては、因縁深い敵となったことが、今作で明らかになります。
それから、ゲラルトさんをフルボッコにした魔法使いのヴィルゲフォルツはビジュアルも凄みを増して登場します。
シリは、この3人に追われることになりますから地獄ですよね。
一方、個人的に株があがったのは、二ルフガードの逃亡兵カヒルです。あまり多くを語ず、謎に包まれたキャラだったんですが、今作では過去も明らかになり、俄然親近感が湧いてきます。はっきり言って死んでほしくないキャラ1位です。
ギブ・ミー・地図!
さて小説には不満もあります。それは「ウィッチャー」の世界の地図が載っていないということです。 二ルフガードだのシントラだのレダニアだの…国名、地名はゲームをしていないと頭に入ってこないでしょう。
早川書房には地図をつけてくれ、と声を大にして言いたいです。そもそも異世界もののファンタジーって地図はマストでしょう!
ということで、最後にWIKIから地図を転載したいと思います。最終作も楽しみです